3月26日発売の、「シティーハンター」をラベルにしたグレンファークラス2010。漫画の知名度もあり、世界のウイスキーファンの中で、話題になっています。これが発売になるまでの流れを書きます。
2019年4月30日グレンファークラス蒸留所を訪問。ボトリングをする樽を選ぶためでした。1997年から2010年に蒸留された樽を約20種類熟成庫の中でテイスティングし、これと思ったのが、今回の樽番号1497なのです。
グレンファークラスはシェリー樽を使ってウイスキーの熟成をしています。樽はスペインのホセ・ミゲル・マーティンというボデガで作られたものです。シェリーをシーズニングする期間は、3年半から4年半。6年間シーズニングした樽を使うこともあるようです。この期間はマッカランが約2年というのに比べて長い。しかしながらウイスキーをあまり長期間熟成すると、ウッディになりがちです。この樽番号1497は、9年熟成なので、ファーストフィルでありながら、ウッディさが過度にならず、チョコレートやドライフルーツのニュアンスが、バランスよくでていたのです。
さて、ラベルに使用する『シティーハンター』のイラストも決まった11月に、ちょうど来日されたジョージ・グラントにインタビューしました。まず、中学生になるお嬢さんにと、ピカチュウのグッズをプレゼント
山岡『お嬢さんは日本の漫画が好きなそうですね。どんな漫画が好きなのですか?』
ジョージ『このピカチュウや、週刊少年ジャンプの「デスノート」などです』
山岡『今回、ラベルに漫画のイラストを使うことになりますが、それに対してはどう思われますか?』
ジョージ『いつも娘に日本の漫画は、数百年の歴史を持つアートで素晴らしいものなのだと教えられています。漫画のイラストは大歓迎です』
中学生としては大人っぽく見える娘さんの写真もみせてくれました。
その後和やかな雰囲気で、さまざまな話題になりましたが、気になることも聞いてみました。
山岡『グレンファークラスの発酵時間は、70から105時間と長いですが、そうしている理由はなんでしょうか?』
ジョージ『グレンファークラスは、スパニッシュオークのシェリー樽を使用するのですが、その樽の主張が強いので、それに対抗するには、スピリッツのフルーティさが必要で、その結果発酵時間を長くしているのです』
またボデガに関してもきいてみました。
山岡『1988年からホセ・ミゲル・マーティンから樽を買っているそうですが、そこはへレス西方のHuelvaという町にあるボデガですね。最近へレス、サンルーカル、サンタマリアの三角地帯、シェリートライアングルで作られたもののみをシェリー樽と呼べるというレギュレーションができましたが、それに関してはどうですか?』
ジョージ『ホセ・ミゲル・マーティンの樽は、マッカランやウィリアム・グラントも使用しています。ホセ・ミゲル・マーティンは、へレスの近くにも、樽工場と熟成庫を作り、その問題をクリアしています』
またグレンファークラスの樽を選ばせてもらうことを約束し、最後に、高層ビルの夜景をバッグに、シティーハンターのイラストを持ってもらい、記念撮影をしました。
2020年3月
文/山岡秀雄、写真/山岡美佐子