11月25日、秩父第二蒸溜所を訪れた。地元のアーティストに依頼して、エントランスの門のフェンスには、ポットスチルと麦をデザイン化してもらっている。この凝った雰囲気にくらべ、生産棟へのやや長い道の周りは、たんなる更地で、殺風景だ。これは、このスペースに将来、熟成庫を建てるためのものだからだと後から知った。
生産棟の中に入ると右手には、ミルルームがある。第一蒸溜所と同じ赤いアランラドック社製のミル(粉砕機)が使われているが、違うのは、ビューラー社製のデストナーが使われていることだ。第一では、麦芽に混入している石は、手で除去していたのだ。
二階に上がるとコントロールルーム(事務所)があり、そこはガラス張りで、マッシュタン(糖化槽)から、ポットスチルまでを見渡すことができる。ここには、スコットランドでは、普通のことだが、第一にはないコンピューターのパネルがあり、マッシュタンやポットスチルの状況を監視することができる。
ステンレス製で銅の覆いがついているマッシュタン(糖化槽)には、特注でサイトグラスがついている。濾過されている工程を見ていると一日中見ていても飽きないと、第二蒸溜所の生産責任者の門間さんはおっしゃっていた。
ウォッシュバック(発酵槽)は現在5槽。第一はミズナラ製であったが、第二はフレンチオーク製である。ワインウッドリザーブに使う卵型のタンと同じくタランソー社に依頼して作ってもらった。ウォッシュバックの容量は15,000Lだが、張り込む麦汁は10,000Lだ。しかし発酵の初期段階では、上がってくる泡を切るために、スイッチャーが使用される。この時期までに、約50仕込みが行われていたが、ノンピートの麦芽のみが使用された。発酵時間は、102時間から103時間で、第一より約10時間長い。
ポットスチルは第一蒸溜所と同じ形状だが、一仕込みが5倍なので、当然大きい。ただし第一は、ウォッシュ・スチル(初溜釜)とスピリッツ・スチル(再溜釜)が同じ容量だったのに対して、第二はウォッシュ・スチルが10,000L、スピリッツ・スチルが7,000Lである。通常、スピリッツ・スチルはウォッシュ・スチルより小さいことが普通である。第一はスピリッツ・スチルが同じ大きさだったことにより、銅とのコンタクトが多いはずなので、この違いが将来なにかの違いをもたらすのかもしれない。
ポットスチルの第一との大きな違いは、第一はスチームコイルによる間接加熱であるのに対して、第二はガス直火であることだ。ガス直火はポットスチル内の温度が上がりにくいが、一方で一度温度が上がると下がりにくいのだという。
ウォッシュ・スチル内は、お湯かポット・エール(余溜)を入れたままにしている。第一は1バッチごとに、ウォッシュ・スチル中を清掃しているのとは対照的である。スピリッツ・スチルもフェインツ(ヘッドとテイル)を入れたままにしている。第一にはないCIP(定置洗浄)は、第二には、2つのスチルに装填されているのだが、いまのところ使用したことがないという。現時点では、スピリッツがクリーンでライトすぎるので、重みを出すために、中を洗わないでおいているのだという。ミドルカットは、第一と同じく感性によって決められている。肥土伊知郎氏は、蒸溜所にいるときは毎日チェックしているという。
ポットスチルの前は、大きなガラス張りになっていて、外の風景が見ることができ、遠い山並みまで眺めることができる。ただし夏には、ツタ植物が木を覆っているので、ジャングルのようになるのだという。
現時点で敷地内に1つある熟成庫には、さまざまな種類の樽がある。全体的にはバーボン樽が多い。色の黒い、ソレラ樽も見かけることができる。サイズはメディア樽(ホグスヘッドと同じ容量)で、オロロソやクリームなどが詰められていたものだ。ところで第一の樽番号は単なる数字だけだが、第二の樽番号は、BJから始まっている。たとえばBJ0713のように。このBJとは、Aを0、Bを1、Cを2、のように置き換えたものだという。BJとは、19、つまり2019年に詰められたものということを意味する。記念すべき1号樽BJ0001は、バーボン・ホグスヘッドであった。
2019年11月取材
文/山岡秀雄(ウィスキー評論家)